車の下回り錆対策ガイド|アンダーコートの選び方と正しい施工方法

車検でリフトアップされた下回りを見て、思った以上に錆びていてヒヤッとしたことはありませんか?

普段は見えない場所だからこそ、気づいたときには手遅れ――というケースが少なくありません。特に融雪剤が撒かれる地域では、たった一冬で錆が進行することもあります。フレームやサスペンションアームに穴が開けば、修理代は数十万円。最悪の場合、走行中に部品が脱落する危険すらあります。

この記事では、プロの板金塗装工場でも使われているドイツ・ヘンケル テロソン(Teroson)のアンダーコート剤を中心に、車の下回り錆対策を一から解説します。

なぜ車の下回りは錆びやすいのか

下回りが錆びる原因は大きく3つあります。

  • 融雪剤(塩化カルシウム)による塩害 — 塩分が金属に付着し、電気化学反応で腐食が加速
  • 飛び石・砂利による塗膜の剥がれ — 走行中に跳ね上げた石が防錆塗膜を傷つけ、そこから水分が侵入
  • 水分と泥の滞留 — フェンダー内やフレームの袋状構造に水が溜まり、乾きにくい環境が腐食を促進

新車には工場出荷時にアンダーコートが施されていますが、経年と飛び石で徐々に薄くなります。3〜5年を過ぎたら、追加の防錆処理を検討する時期です。

錆の進行度で対処が変わる

段階状態対処法
予防錆なし。新車〜軽微な塗膜劣化アンダーコートを塗って防錆膜を形成
初期表面に薄い赤錆が点在錆転換剤で黒錆に変換 → アンダーコート
中期広範囲に錆、一部浮き錆浮き錆を除去 → 錆転換剤 → アンダーコート
重度穴あき・板金の痩せ板金修理が必要。溶接→防錆処理

ポイントは「初期〜中期」の段階で手を打つこと。ここで正しい防錆処理をすれば、進行を止められます。

まず錆を止める — 錆転換剤RS

ENDOX 錆転換剤RS 500ml(ハケ塗りタイプ)

既に錆が出ている場合、いきなりアンダーコートを上塗りしても意味がありません。錆の下で腐食が進行し続けるからです。

錆転換剤RSは、タンニン成分が赤錆(酸化鉄)を安定した黒錆に化学変換し、同時に表面に防錆皮膜を形成します。水溶性なので溶剤臭が少なく、約1時間で皮膜が形成される速乾タイプです。

500mlのハケ塗りタイプはピンポイント塗布に、400mlスプレータイプは広い面積に向いています。スプレー1本で約1.5〜3m²施工可能です。

施工の手順

  1. 浮いた赤錆を金ブラシやサンドペーパーで除去する(浮き錆が残ると転換しきれない)
  2. 表面のホコリや油分を除去し、乾燥させる
  3. ハケまたはスプレーで薄く塗布する
  4. 表面の色が濃灰色から黒に変化したら、再度薄く塗布(2度塗りで防錆効果アップ)
  5. 約2〜3時間乾燥後、サフェーサーまたはアンダーコートを上塗り

1日以上放置しても防錆効果は持続しますが、上塗りする場合は不織布の研磨剤で軽く足付けしてから塗装してください。

アンダーコートの選び方 — 3タイプの違い

テロソン/エンドックスのアンダーコートは大きく3タイプ。用途と仕上がりが異なります。

UBC-R 2896

UBC-HB 2700

UBC-TW 1600

UBC-R 2896UBC-HB 2700UBC-TW 1600
タイプゴム質/樹脂系ビチューメン系ワックス系
硬化完全硬化半乾燥表面乾燥
上塗り可能不可不可
ブラックブラック半透明
耐塩害◎(塩水噴霧1000時間クリア)
消音効果◎(凹凸仕上げ可能)
容量1L / 18L1L / 18L / 480mlスプレー1L / 18L
向いている用途上塗り塗装したい箇所、一般的な防錆塩害地域、厚塗り、凹凸テクスチャ見た目を変えたくない箇所

UBC-R 2896 — オールラウンドな定番

ゴム質/樹脂系のアンダーコートで、完全硬化するため上から塗装が可能です。板金塗装の仕上げに使われることが多く、シャーシ、フレーム、フェンダー内など幅広い部位に使えます。

UBC-HB 2700 — 塩害地域の最強防錆

UBC-HB 2700 1L(プロ仕様ラベル)

ビチューメン(アスファルト系)樹脂をベースにした高柔軟性タイプ。塩水噴霧試験1000時間クリアという高い防錆性能を持ちます。特化剤(石油系溶剤)を含まず、キシレン・エチルベンゼン非含有で環境にも配慮。

チキソトロピー性があり、缶を振ると粘度が下がって吹きやすく、塗布後は粘度が上がって垂れにくい特性があります。推奨塗膜は0.5〜1.0mm厚。厚塗りしたい場合は1mm厚に吹いた後、乾燥させてから塗り足してください。

表面に凹凸テクスチャを出せるので、消音(制振)効果も兼ね備えます。既に錆びている箇所にも直接塗布可能です。

UBC-TW 1600 — 見た目を変えずに防錆

半透明のアンダーコートで、下地の色を活かしたまま防錆膜を形成します。耐熱200℃で表面乾燥するタイプ。マフラー周辺を除く下回り全般に使えます。「黒く塗りたくない」という方に。

手軽に使えるスプレータイプ(クリアUBCスプレー 420ml)もあります。ただしワックス系なのでシャーシブラックのような塗料とは塗膜が異なり、半乾燥タイプです。

見落としがちな「中」の防錆 — インナープロテクション

インナープロテクションスプレー 420ml

サイドシル、ドア内部、フレームの袋状構造など、外から見えない部分こそ水が溜まりやすく錆びやすい場所です。インナープロテクションは浸透性が高く、金属表面に入り込んで内部から防錆膜を形成します。耐熱160℃、表面は乾燥しないワックスタイプ。

ロングノズルを使えば、小さな穴からフレーム内部に噴射できます。

施工に必要な工具

UBSピストル高粘度

ノンクリーンUBSピストル

1Lカートリッジタイプのアンダーコートを施工するにはエアガンが必要です。

工具特徴対応製品
UBSピストル高粘度粗目/細目の調整可能。高粘度材料に対応アンダーコート・チッピング全般
ノンクリーンUBSピストル吸上げ管が外せて洗いやすいアンダーコート・チッピング全般
マルチ防錆スプレーガンII多目的。防錆剤の吹付けにWX350、インナープロテクション等

エアガンがない場合は、スプレー缶タイプ(HB2700スプレー 480ml、クリアUBCスプレー 420ml)で対応できます。DIYで部分的に施工するならスプレー缶で十分です。

実際の施工を動画で見る

ゴム系アンダーコート UBC-R2896 施工

タイヤハウス内 スプレー状アンダーコート補修

水性アンダーコート UBC-A6100 施工

よくある質問

R2896とHB2700、どちらを選べばいい?

R2896はゴム質で完全硬化し上塗り塗装が可能。HB2700はビチューメン系で半乾燥タイプ。上塗り塗装が必要な箇所にはR2896、塩害地域で厚塗り・凹凸テクスチャが欲しい場合はHB2700がおすすめです。

気温が低いとガンから出にくいのですが?

気温が低いと材料の粘度が上がります。施工前に缶を温めてから使用してください。塗布ガンのノズルが詰まっている場合は、新しいガンへの交換をおすすめします。缶は15℃〜30℃の環境で施工してください。

シャーシブラックとアンダーコートの違いは?

シャーシブラックは「塗料」です。対してアンダーコート(UBCシリーズ)は防錆専用の厚膜コーティング剤。塗膜の厚さ、防錆性能、耐チッピング性が全く異なります。本格的な防錆を求めるならアンダーコート一択です。

錆転換剤を塗った後、すぐにアンダーコートを塗れる?

錆転換剤RS塗布後、約2〜3時間乾燥させてからアンダーコートを施工してください(気温が低い場合は4〜6時間)。1日以上経過した場合は、表面を不織布の研磨剤で軽く足付けしてから上塗りしてください。

フェンダーの下に1mm以上の厚みが欲しい場合は?

UBC-HB 2700がおすすめです。推奨塗膜は0.5〜1.0mm。さらに厚く塗る場合は、まず1mm厚に吹いてから乾燥させ、その上に塗り足してください。一度に厚く塗ると乾燥不良の原因になります。

インナープロテクションとTW1600の違いは?

TW1600は耐熱200℃で表面が乾燥するタイプ。外側の防錆に向いています。インナープロテクションは耐熱160℃で浸透性が高く、表面乾燥しないタイプ。フレーム内部やサイドシル内部など「中の防錆」に使います。

施工の流れまとめ

  1. リフトアップして下回りを高圧洗浄。泥・油分を除去して十分乾燥
  2. 浮き錆がある箇所は金ブラシで除去
  3. 錆がある部分に錆転換剤RSを塗布。2〜3時間乾燥
  4. マスキング(ブレーキ、駆動部、マフラーなど熱が発生する部分を保護)
  5. アンダーコートを施工。エアガンで20〜30cm離して均一に塗布
  6. フレーム内部にインナープロテクションを噴射
  7. 乾燥を確認してマスキング除去

プロの施工であれば半日〜1日の作業です。DIYでスプレー缶を使ったタイヤハウスの部分施工なら1〜2時間で完了します。

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