自動車シーラーの選び方と施工テクニック|MS9320・A-SMP8700を使いこなす
2026年3月23日
板金修理の仕上がりを大きく左右するシーラー。パネルの合わせ目に純正同等のシーリングが施されているかどうかで、修理の品質は一目でわかります。
この記事では、テロソン(Teroson)の自動車補修用シーラー MS9320 と A-SMP8700 の違い、さざ波状シーリングの作り方、ノズルの選び方、施工工具の使い分けまで、プロの現場で求められるテクニックをまとめました。
MS9320 vs A-SMP8700 — 2大シーラーの違い
MS9320(変成シリコン)
A-SMP8700(変成ポリマー)
どちらも自動車補修用の1液湿気硬化型シーラーですが、ベースポリマーが異なるため仕上がりの特性が変わります。
| MS9320 | A-SMP8700 | |
|---|---|---|
| ベースポリマー | 変成シリコン(MSポリマー) | 変成ポリマー(SMP) |
| 色展開 | 白・黒・グレーなど多色 | 白・黒・グレーなど多色 |
| 硬化タイプ | 1液湿気硬化 | 1液湿気硬化 |
| 硬化速度 | MS9320SF(速乾タイプ)あり | 標準的 |
| 硬度(ショアA) | MS9320: 65 / MS9320SF: 30 | 中程度 |
| 塗装性 | 硬化後に上塗り可能 | 硬化後に上塗り可能 |
| 特徴 | 硬めの仕上がり。さざ波シーリングに最適。SFは柔軟タイプ | 接着力が高い。弾性があり振動吸収に優れる |
| 膜厚(1回塗布) | 約1mm | 約1mm |
| 主な用途 | パネル合わせ目、ドア周り、さざ波シーリング | 構造接着を兼ねたシーリング、振動の多い箇所 |
選び方の目安として、純正のシーリングラインを再現するさざ波施工にはMS9320系が適しています。パネル接合部で接着力と弾性を両立させたい場合はA-SMP8700を選んでください。
さざ波状シーリングの作り方
純正車両のパネル合わせ目に見られる「さざ波」パターン。板金修理後にこれを再現できるかどうかが、プロの腕の見せ所です。
必要なもの
- MS9320(またはMS9320SF)
- ウイングノズル — さざ波パターンを出すための専用ノズル
- テレスコープピストルマルチプレスまたはパワーラインII
手順
- ウイングノズルをカートリッジに取り付ける。ノズル先端の幅を調整することで塗布幅を5〜13mmの範囲でコントロールできる
- 施工面の油分・ホコリを除去し、必要に応じてプライマーを塗布
- ガンのトリガーを一定の力で引きながら、パネル合わせ目に沿って等速で移動する
- ノズルを軽く左右に振ることで、さざ波パターンが生まれる。振り幅と移動速度を一定に保つのがコツ
- 塗布直後にヘラで整えたい場合は、硬化前に行う。ただしさざ波パターンを活かすなら触らない
ウイングノズルの幅設定は施工箇所に合わせて決めます。ドアの合わせ目なら5〜8mm程度、フェンダーの繋ぎ目なら10〜13mm程度が目安です。
ノズルの選び方 — 用途別一覧
シーラーの仕上がりはノズルで決まります。同じシーラーでもノズルを変えるだけで全く違うビードが引けるため、用途に応じた選択が重要です。
| ノズル種類 | ビード形状 | 主な用途 |
|---|---|---|
| スタンダードノズル | 丸ビード | 一般的なシーリング。隙間充填、接合部のシール |
| ウイングノズル | さざ波パターン | パネル合わせ目の純正再現。幅5〜13mm調整可能 |
| ワイドストリームノズル | 幅広フラット | 広い面積のシーリング。ルーフパネルの繋ぎ目など |
| フラットストリームノズル | 薄いフラットビード | 薄膜シーリング。目立たせたくない箇所に |
| 45°ジョイントノズル | 角度付きビード | 奥まった箇所、手が入りにくい角度での施工 |
最も使用頻度が高いのはスタンダードノズルとウイングノズルの2種類です。この2本があれば、ほとんどの板金修理に対応できます。45°ジョイントは、ノズルの向きを変えたい場合にスタンダードやウイングと組み合わせて使います。
施工工具 — テレスコープピストルとパワーラインII
パワーラインII
シーラーの310mlカートリッジをセットして使う手動ガンには、主に2種類あります。
| 工具 | 特徴 | 向いている作業 |
|---|---|---|
| パワーラインII | 押し出し力が高く、高粘度のシーラーも安定して吐出できる。ワイドストリームノズルやフレキシブルホースなど豊富なアタッチメントに対応 | MS9320の通常施工、さざ波シーリング、高粘度材料全般 |
| テレスコープピストルマルチプレス | 軽量設計で取り回しがしやすい。トリガーの引きが軽く、繊細なコントロールが可能 | 細かいシーリング、A-SMP8700の施工、連続作業 |
高粘度のMS9320をしっかり押し出したい場合はパワーラインIIの押し出し力が頼りになります。一方、取り回しの軽さを重視する場面ではテレスコープピストルが便利です。両方を用意しておき、材料と作業内容で使い分けるのが理想です。
施工のコツ — 知っておきたいポイント
膜厚の目安
MS9320SFは1回の塗布で約1mmの膜厚になります。薄く均一に塗りたい場合はノズルの移動速度を速めに、厚く盛りたい場合はゆっくり移動してください。厚塗りが必要な場合は、1回塗って表面硬化を待ってから2回目を塗る方が仕上がりが安定します。
上塗り塗装時のプライマー
MS9320を塗った後に塗装する場合、プライマーの要否はシーラーの乾燥状態で変わります。
- シーラーが乾く前(未硬化の状態) — プライマーレスで上塗り可能。そのまま塗装してOK
- シーラーが完全に乾燥した後 — ミッチャクロンマルチを塗布してから上塗りする。密着不良を防ぐため、この手順は省略しない
現場では「塗ったその日のうちに塗装まで終わらせる」のが理想です。翌日以降に持ち越す場合はミッチャクロンマルチを忘れずに。
低温時の対処
気温が10℃を下回ると、シーラーの粘度が上がってガンから出にくくなります。施工前にカートリッジをぬるま湯(40℃程度)に浸けるか、暖房の効いた室内に30分ほど置いて温めてください。特にA-SMP8700は低温で硬くなりやすい傾向があります。
施工テクニックを動画で見る
MS9320シーラー開封とテレスコピストルの使い方
線引き用シーラー MSP-7100 開封方法とウイングノズルの使用方法
さざ波状テープ作成と実車施工
よくある質問
MS9320SFと通常のMS9320は何が違う?
SFは「スーパーフレックス」の略で、柔軟タイプです。通常のMS9320は硬度がショアA 65と硬めで、SFはショアA 30と柔軟。硬化速度もSFの方が速く、短時間で次の工程に移れます。振動の多い箇所や柔軟性が必要な部位にはSFを選んでください。
シーラーが完全に乾いた後のプライマーは何を使う?
ミッチャクロンマルチがおすすめです。シーラー表面に薄くスプレーしてから上塗り塗装を行ってください。シーラーが乾く前であればプライマーなしで直接塗装できますが、完全硬化後はミッチャクロンマルチで密着性を確保する必要があります。
A-SMP8700がガンから出にくい場合は?
低温で材料が硬くなっている可能性があります。カートリッジをぬるま湯(40℃程度)に10〜15分浸けるか、暖房の近くに置いて温めてから使用してください。無理にガンで押し出すとガンの破損につながるため、必ず温めてから施工しましょう。
パワーラインII用のシーラーをテレスコープピストルで使える?
はい、使えます。カートリッジの規格が同じであれば、どちらのガンにもセット可能です。テレスコープピストルの方が押し出し力が強いため、高粘度のシーラーを使う場合はテレスコープピストルの方がスムーズに施工できます。
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