施工前に見る四つの下地状態
下地を一括して「錆あり/なし」で判断すると、必要な処置を見落とします。濡れ、浮き錆、古い塗膜の剥がれ、腐食による穴や変形を分け、どの状態なら次工程へ進めるかを決めます。
製品資料では、HB2700とR2896とも汚れ・油脂分を除去して完全に乾かすよう案内しています。R2896は必要に応じて足付けし、HB2700も必要に応じた足付けを記載しています。
| 見つけた状態 | 施工前の判断 | 確認すること |
|---|---|---|
| 水分・洗浄水が残る | そのまま施工を進めない | 対象製品の「完全乾燥」条件に合うか |
| 浮いた赤錆 | 残したまま塗り込まない | 錆の除去後、金属の損傷を確認 |
| 旧塗膜の浮き・剥がれ | 健全部と剥離部を分けて扱う | 密着状態と製品との適合を確認 |
| 穴・変形・強度不安 | 塗膜で補修と判断しない | 車両整備・板金修理の要否を確認 |
洗浄・脱脂・乾燥を飛ばさない
HB2700とR2896の資料は、施工面の汚れや油脂分を除去し、完全乾燥させる工程を示しています。水分が残ったまま塗布できるという記載はありません。洗浄後の乾燥時間は環境や部位で変わるため、資料にない一律の時間を決めず、濡れが残っていない状態を確かめます。
洗浄剤や脱脂剤を使う場合は、素材と既存塗膜に適合する品目を確認し、素材側の作業指示に従います。薬剤が残らないよう、製品・車両の指定する前処理と乾燥を行ってから塗布します。
フレームやホイールハウスの凹部は、表面だけ乾いて見えても汚れや水分が残る場合があります。ライトや鏡で施工範囲を確認し、見えない裏側へ材料を先に吹かないようにします。点検できない範囲は、車両の整備資料や施工業者の判断を先に確認します。
錆転換剤RSは浮き錆除去から始める
RSのカタログは、浮いた赤錆が残ると完全に転換しないため、金ブラシやサンドペーパーなどで浮き錆を除去するよう記載しています。ホコリと油分を落として乾燥させた後、薄く均一に塗布し、表面が濃灰色から黒色へ変化した場合に薄く重ねます。
厚塗りでは防錆被膜が柔らかい樹脂状になり、上塗りしづらくなる可能性があります。塗装・パテへ進む場合は、通常約2〜3時間後(低温時は約4〜6時間後)に表面を軽く足付けし、必ず2液プライマーサフェーサー(プラサフ)を入れてから次工程へ進みます。一部のパテは密着しにくい場合があるため、パテ側の適合も確認してください。アンダーコートへの直接重ねは資料に明記されていないため、製品ごとの指示を照合します。
古い塗膜は密着と傷みを見て分ける
SB3120のカタログはPVC、ビチューメン、ゴム系、樹脂系塗膜への追加用途を示しますが、これを全製品・全状態の旧膜に適合する保証と読み替えることはできません。塗膜が浮いていれば、その上から覆うだけで密着が回復するわけではありません。
既存膜の材質が不明、剥離が進行、下地に腐食穴がある場合は、対象車両の修理方法を先に確認します。記載のない組み合わせは目立たない場所で適合を確認してから進めます。
施工へ進む前の最終確認
「乾いている」「浮き錆がない」「健全な塗膜だけが残っている」「塗布禁止部位を特定できている」の四点を、施工範囲の図や写真と照らします。駆動部、熱交換部品、モーター、高温箇所などの禁止事項は材料のカタログに従います。
下地の状態が判断できない場合は、施工を急がず、車両の整備要領や材料メーカーへ確認します。塗膜は構造補修の代わりになりません。
表面の錆が深く、金属が薄くなっている、穴が開いている、固定部が損傷している場合は、防錆塗膜を追加しても元の強度は戻りません。補修後に防錆するのか、部品交換が必要かを判断してから材料を使います。
下地が健全でも、粉じんや脱脂剤の残留など、塗布面に目視しづらい汚れがある場合があります。施工前に表面を再確認し、清掃後に再汚染していないかも点検します。下地処理の記録を残すことで、後から塗膜状態を確認するときに施工条件をたどれます。
複数の作業者がいる場合は、どの状態なら補修担当へ引き継ぐかを決めておきます。表面を覆って見えなくする前に、腐食範囲や既存塗膜の剥がれを写真へ残すことで、後から下地を見直す場合にも判断材料を共有できます。
