アンダーコートとは、車の下回りを塩害・飛び石・水分による錆から守るための厚膜防錆コーティングです。シャーシブラックより厚い保護膜をつくり、防錆性と耐チッピング性を高めます。
車検でリフトアップされた下回りを見て、思った以上に錆びていてヒヤッとしたことはありませんか?
下回りは見えにくく、外観だけで錆の深さや部品の状態を判断できません。塗膜の浮きや剥がれ、穴、変形などが見つかったときは、塗装や防錆材を重ねる前に部位と損傷を点検してもらいましょう。
この記事では、プロの板金塗装工場でも使われているドイツ・ヘンケル テロソン(Teroson)のアンダーコート剤を中心に、車の下回り錆対策を一から解説します。
なぜ車の下回りは錆びやすいのか
下回りが錆びる原因は大きく3つあります。
- 融雪剤(塩化カルシウム)による塩害 — 塩分が金属に付着し、電気化学反応で腐食が加速
- 飛び石・砂利による塗膜の剥がれ — 走行中に跳ね上げた石が防錆塗膜を傷つけ、そこから水分が侵入
- 水分と泥の滞留 — フェンダー内やフレームの袋状構造に水が溜まり、乾きにくい環境が腐食を促進
新車時の下回り処理は車種や仕様によって異なり、追加施工の時期を年数だけで決めることはできません。車両の指定、既存処理、使用環境と点検結果を確認し、必要性を判断してください。
錆や塗膜の傷を見つけたら確認すること
| 見つけた状態 | 次にすること | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 見える範囲で錆がない/既存処理が分からない | 車種、既存処理、使用環境を確認し、状態を記録する | 新車時の処理や追加施工の要否は車両ごとに異なる |
| 薄い赤錆、塗膜の傷や剥がれ | 部位と範囲を写真に記録し、下地や周囲の状態を点検する | 外観だけでは腐食の深さや進行度を確定できない |
| 広がり、塗膜の浮き、浮き錆 | 範囲と部材を点検し、適切な下地処理と乾燥を計画する | 処理方法は下地、既存皮膜、次工程の材料で変わる |
| 穴、減肉、変形などの損傷 | 防錆材で覆わず、整備工場に修理の要否を点検してもらう | 必要な修理方法は部位と損傷状態を見て判断する |
外観から腐食の段階、強度、残り寿命を確定することはできません。防錆処置は腐食を抑えるためのもので、穴や部品の強度を元に戻す修理ではありません。損傷が疑われる場合は、材料を塗る前に工場で点検してください。

錆転換剤RSによるビフォーアフター
実際の施工例 — ホンダ ライフのアンダーコート
実際の板金工場で行われたホンダ ライフのアンダーコート施工をご紹介します。施工前の状態から完成までの流れがわかります。

施工前の下回り。エンジン・トランスミッション周りの錆が確認できる

新聞紙で丁寧にマスキング。塗装不要な部分をしっかり保護

エアガンでアンダーコートを吹き付け中

施工完了。均一な黒い塗膜が全体を覆っている
写真提供: オートボディツタ
錆がある場合の下地確認 — 錆転換剤RS
錆や既存皮膜の状態を確認せずに上塗りすると、下地の状態を見えにくくし、適切な処理につながらないことがあります。まず部位、部材、損傷の有無を確認し、必要に応じて工場へ点検を依頼します。
錆転換剤RSは、タンニン成分が赤錆(酸化鉄)を安定した黒錆に化学変換し、同時に表面に防錆皮膜を形成します。水溶性なので溶剤臭が少なく、約1時間で皮膜が形成される速乾タイプです。
500mlのハケ塗りタイプはピンポイント塗布に、400mlスプレータイプは広い面積に向いています。スプレー1本で約1.5〜3m²施工可能です。
施工の手順
- 浮いた赤錆を金ブラシやサンドペーパーで除去する(浮き錆が残ると転換しきれない)
- 表面のホコリや油分を除去し、乾燥させる
- ハケまたはスプレーで薄く塗布する
- 表面の色が濃灰色から黒に変化したら、再度薄く塗布(2度塗りで防錆効果アップ)
- 塗装やパテへ進む場合は、製品資料の乾燥・足付け条件を確認し、2液プライマーサフェーサーを介して次工程へ進む
錆転換剤RSを使う場合は、下地、乾燥状態、上塗り材を確認してください。製品資料は塗装・パテの前に2液プライマーサフェーサーを入れる工程を案内しています。
アンダーコート6製品の比較と選び方
アンダーコートは、防錆性能だけでなく、上塗りの有無、塗膜の柔軟性、作業環境、下地を見せるかどうかで選択が変わります。まず用途を決め、製品ごとの施工条件は商品ページや技術資料で確認してください。
| 製品 | タイプ・仕上がり | 選ぶポイント | 容量・形態 |
|---|---|---|---|
| UBC-R 2896 | ブラック/ゴム質・樹脂系 | 速乾性と硬い塗膜。上塗り塗装をする補修 | 1L・18L |
| UBC-HB 2700 | ブラック/高柔軟性・表面乾燥 | 塩害対策、厚膜、石跳ね保護、消音 | 1L・480mlスプレー |
| UBC-HB 5700 | ブラック/高柔軟性・低粘度 | HB 2700系の保護性能と作業性・乾燥性を重視 | 1L |
| UBC-RR 2000 | ブラック/ゴム・レジン系、高柔軟性 | 速乾、密着性、上塗り、容量の選びやすさ | 1L・480mlスプレー・20L |
| UBC-AB 6700 | ブラック/水性 | 作業環境への配慮、防錆、石跳ね保護、消音 | 1L |
| UBC-TW 1600 | 半透明/ワックス系・表面乾燥 | 下地を見せたい箇所、約200℃までの耐熱性 | 1L・18L |
数値や適合は製品資料に基づく代表値です。施工対象、下地、温度、膜厚、上塗り塗料との組み合わせにより条件が変わるため、施工前に最新資料をご確認ください。
用途から絞る早見ガイド
- 上塗り塗装を前提にする:UBC-R 2896、UBC-RR 2000
- 融雪剤地域で柔軟な塗膜と厚膜保護を重視する:UBC-HB 2700、UBC-HB 5700
- 水性タイプで作業環境に配慮する:UBC-AB 6700
- 下地や既存の外観を見せたまま防錆する:UBC-TW 1600
- ガンを使わず部分補修する:目的に合う480mlまたは420mlスプレーを選ぶ
下回り防錆の選び方 — 色・部位・点検・上塗りで決める
黒く均一に仕上げるか、下地や部材を見せたまま保護するかで、候補は変わります。色だけで決めず、施工部位、既存皮膜、点検・整備のしやすさ、上塗りの有無を順番に確認してください。
| 判断軸 | 確認すること | 選び方の目安 |
|---|---|---|
| 色・下地の見え方 | 黒で覆うか、下地・配線・部材の状態を見せる必要があるか | 黒系は外観を揃えたい箇所、半透明系は点検時に下地を確認したい箇所の候補にする。製品の用途と仕上がりを資料で照合する。 |
| 部位 | シャーシ、フレーム、ホイールハウス、タイヤハウス、アンダーカバー周辺 | 外側の防錆、飛び石保護、消音、内側の点検性など、部位ごとの目的を先に決める。アンダーカバー内やタイヤハウスは部材の種類も確認する。 |
| 点検・整備 | 施工後も錆・剥がれ・漏れを確認するか、補修を繰り返すか | 点検で状態を見せる必要がある箇所は、視認性と補修方法を含めて材料を選ぶ。施工後に見えなくなること自体を性能とは扱わない。 |
| 上塗り | 上塗り塗装をするか、既存皮膜の上へ塗るか | 上塗り可否と組み合わせは製品ごとに異なる。下地・乾燥・上塗り塗料を揃えて資料で確認する。 |
| 車両・材料指定 | 車両メーカー、補修手順、材料メーカーの指定 | 指定がある場合はそれを優先する。車種名だけで適合を断定せず、部材と既存皮膜を添えて確認する。 |
シャーシブラックと比較するときの条件
シャーシブラックとの比較は、製品名だけで優劣を決めるものではありません。同じ条件を揃えたときに、どの目的にどの仕上がりが合うかを確認します。
- 同じ下地と前処理(錆、油分、既存皮膜の状態)
- 同じ膜厚または塗布量、同じ施工方法と乾燥条件
- 同じ部位・使用環境・点検条件
- 同じ評価方法と評価期間(防錆、飛び石、補修性など)
条件が違う比較結果から、すべての車両や部位に共通する優劣を断定しないでください。比較対象の製品名、下地、施工条件、評価方法を揃えて相談すると判断しやすくなります。
アンダーカバー内・タイヤハウスは部材から判断する
アンダーカバー内やタイヤハウスは、金属だけでなく樹脂・ゴム・既存の成形皮膜が混在します。施工目的と部材を確認してから、材料メーカーと車両側の指定を照合してください。
| 確認軸 | 判断する内容 | 相談前に揃える情報 |
|---|---|---|
| 部材 | 金属、樹脂、ゴム、既存の成形皮膜 | 車種・年式、部材の材質、施工箇所の写真 |
| 既存皮膜 | 剥がれ、浮き、油分、泥、過去の補修材の有無 | 洗浄・除去後の状態、残す皮膜と除去する皮膜 |
| 施工目的 | 防錆、飛び石保護、消音、外観、点検性のどれを優先するか | 目的、上塗りの有無、施工後に点検・整備する予定 |
| 指定・適合 | 車両側の指定と材料資料が一致するか | 製品名、下地、部位、既存皮膜、使用する設備をまとめて確認 |
UBC-R 2896 — オールラウンドな定番
ゴム質/樹脂系のアンダーコートで、完全硬化するため上から塗装が可能です。板金塗装の仕上げに使われることが多く、シャーシ、フレーム、フェンダー内など幅広い部位に使えます。UBC-R 2896の商品ページでは、品番80021(1L)と品番80118(18L)のラインナップも確認できます。
UBC-HB 2700 — 塩害地域の厚膜・柔軟タイプ
ビチューメン(アスファルト系)樹脂をベースにした高柔軟性タイプ。塩水噌霧試隣1000時間クリアという高い防錆性能を持ちます。チキソトロピー性があり、缶を振ると粘度が下がって吹きやすく、塗布後は粘度が上がって垂れにくい特性があります。表面に凹凸テクスチャを出せるので、消音(制振)効果も兼ね備えます。
新しい選択肢 — HB 5700・RR 2000・AB 6700
UBC-HB 5700はHB 2700より低粘度で、完全乾燥75分という作業性を意識した高柔軟性タイプです。UBC-RR 2000は上塗り可能なゴム・レジン系で、1L、480mlスプレー、20Lから施工規模に合わせて選べます。UBC-AB 6700は水性で、キシレン・エチルベンゼンを含まない作業環境に配慮したタイプです。
UBC-TW 1600 — 見た目を変えずに防錆
半透明のアンダーコートで、下地の色を活かしたまま防錆膜を形成します。耐熱200℃で表面乾燥するタイプ。「黒く塗りたくない」という方に。
見落としがちな「中」の防錆 — インナープロテクション
サイドシル、ドア内部、フレームの袋状構造など、外から見えない部分こそ水が溜まりやすく錆びやすい場所です。インナープロテクションは浸透性が高く、金属表面に入り込んで内部から防錆膜を形成します。ロングノズルを使えば、小さな穴からフレーム内部に噌射できます。
施工に必要な工具
1Lカートリッジタイプのアンダーコートを施工するにはエアガンが必要です。
| 工具 | 特徴 | 対応製品 |
|---|---|---|
| UBSピストル高粘度II | 粗目/細目の調整可能。高粘度材料に対応 | アンダーコート・チッピング全般 |
| ノンクリーンタイプ | 吸上げ管が外せて洗いやすい | アンダーコート・チッピング全般 |
| マルチ防錆スプレーガンII | 多目的。防錆剤の吹付けに | インナープロテクション等。材料と対応資料を確認 |
スプレー缶は部分施工の候補ですが、施工箇所に手が届くか、下地と部位に適合するか、車両側の指定に合うかを確認してください。下回りへ潜る作業や広範囲の施工は、設備のある工場へ相談します。
実際の施工を動画で見る
ゴム系アンダーコート UBC-R2896 施工
タイヤハウス内 スプレー状アンダーコート補修
UBC-HB 2700 施工手順
① セット前の準備・外気温確認
② ノンクリーンガンセット
③ 塗布
よくある質問
R2896とHB2700、どちらを選べばいい?+
HB2700とHB5700の違いは?+
水性のアンダーコートはありますか?+
気温が低いとガンから出にくいのですが?+
シャーシブラックとアンダーコートの違いは?+
錆転換剤を塗った後、すぐにアンダーコートを塗れる?+
フェンダーの下に1mm以上の厚みが欲しい場合は?+
インナープロテクションとTW1600の違いは?+
新車でも下回り防錆は必要ですか?+
塩害地域ではどのタイミングで点検すべきですか?+
施工の流れまとめ
- 車種の指定と施工設備の案内に従って点検・洗浄し、防錆材を塗る下地は十分に乾燥させる
- 浮き錆がある箇所は金ブラシで除去
- 錆のある部分は前処理を行い、RSを使う場合は製品資料の乾燥・2液サフェーサー条件と次工程の材料を確認する
- マスキング(ブレーキ、駆動部、マフラーなど熱が発生する部分を保護)
- アンダーコートは製品ごとの指定に沿って施工する。HB2700の場合は製品資料の塗布距離・膜厚・重ね塗り条件に従う
- 必要な中空部施工は、車両・材料・ノズルの適合を確認して行う
- 乾燥を確認してマスキング除去
必要な設備や施工範囲は車両と状態によって変わります。下回りの点検・施工を依頼する場合は、対象部位、前処理、使用材料、乾燥・上塗り条件を事前に確認してください。
