チッピングコートとは、走行中の飛び石から車の塗膜を守る弾性保護材です。防錆を主目的とするアンダーコートとは役割が異なり、施工部位や上塗りの要否に合わせて使い分けます。
高速道路を走った翌日、フェンダーやロッカーパネルに小さな塗膜の欠けを見つけたことはありませんか?
走行中に前方車両が跳ね上げた小石が塗膜を直撃し、点状に剥がれる「チッピング」。放置すると欠けた箇所から水分が入り込み、塗膜の内側でじわじわと錆が進行します。気づいたときには塗膜がボコッと浮き上がり、板金修理が必要になることも珍しくありません。
この記事では、飛び石ダメージを未然に防ぐチッピングコート剤 SB S3000 の特長、正しい塗り方、施工部位の選び方を解説します。
チッピングコートとは — アンダーコートとの違い
チッピングコートとアンダーコートはどちらも車の下回りを保護する塗膜材ですが、目的が異なります。
| チッピングコート | アンダーコート | |
|---|---|---|
| 主な目的 | 飛び石による塗膜の欠け防止 | 防錆(錆の発生を抑える) |
| 上塗り塗装 | 可能(上塗り前提の設計) | 製品による |
| 使用部位 | ロッカーパネル、フェンダー下部など | フロア、フレームなど下回り全般 |
| 仕上がり | 梨地~凹凸テクスチャ | 防錆膜として完結 |
つまり、チッピングコートは「飛び石から塗膜を守り、その上から塗装で仕上げる」ための下地材です。新車の製造ラインでもロッカーパネルやフェンダーアーチにはチッピングコートが施されています。
チッピング材の選び方 — 材料区分と目的区分を分ける
水性か溶剤系かという材料区分と、飛び石対策・防錆・シーリングという目的区分は別の判断です。製品名や見た目だけで決めず、次の順番で施工条件を整理してください。
| 判断の順番 | 先に確認すること | 選択の考え方 |
|---|---|---|
| 1. 材料区分 | 水性/溶剤系の表示、SDS・製品資料 | 材料区分は製品ごとに確認する。SBS3000やSB3120の役割から、水性・溶剤系を推測しない。 |
| 2. 目的区分 | 飛び石/防錆/シーリングのどれか | 飛び石にはチッピング材、防錆にはアンダーコート、継ぎ目の充填・水密にはシーラーを候補にする。目的が違う材料を代用しない。 |
| 3. 部位 | ロッカーパネル、サイドステップ、フェンダー下部、補修箇所など | SB S 3000はロッカーパネル等の飛び石保護向け。SB 3120は既存塗膜の補修・塗り増しの候補とし、下地と塗膜の種類を確認する。 |
| 4. 下地・上塗り | 裸金属、既存塗膜、錆、油分、上塗りの有無 | 下地の清掃・補修状態と、上塗り塗料との組み合わせを製品資料で確認する。すべての下地・塗料に共通する適合とは限らない。 |
| 5. 設備 | 容器、対応ガン、ノズル、必要な作業環境 | 材料の容器と対応する設備を先に揃える。ガンやノズルの方式だけで仕上がりや適合を判断しない。 |
SB S 3000の用途は飛び石保護、SB 3120の用途は既存塗膜の補修・タッチアップとして確認できます。別の部位や材料へ広げる場合は、車両側の指定と最新の製品資料を照合してください。
SB S3000 — チッピングコートのスタンダード
| 項目 | SB S3000 |
|---|---|
| タイプ | スタンダード |
| 皮膜の特性 | 若干柔らかい仕上がり(耐震性・吸音性を考慮) |
| 接着性 | 鋼板への接着性良好 |
| 色 | ブラック / ホワイト |
| 容量 | 1L |
| 向いている用途 | 飛び石対策全般。ホンダNシリーズ推奨品 |
SB S3000は硬化後の皮膜がやや柔らかく、振動を吸収する性質があります。走行中のロードノイズや小石の衝撃を柔軟に受け止めるため、飛び石対策に加えて吸音・制振効果を兼ねたい場合にも適しています。
※ 従来販売していたハイソリッドタイプの ACC3000 は廃盤となりました。現在はSB S3000をお求めください。
実際の施工例 — プジョーのサイドステップ
プジョー208のサイドステップにチッピングコートを施工した例です。梨地状のテクスチャが飛び石の衝撃を吸収し、塗膜を保護します。

施工対象のプジョー208

サイドステップの梨地テクスチャ

フロアパンの塗膜。細かい梨地が確認できる
チッピングコートを施工する部位
飛び石の被害を受けやすい箇所を中心に施工します。
- ロッカーパネル(サイドシル外面) — 前輪が跳ね上げた石が最も当たりやすい部位
- ドア下部 — ロッカーパネルと同様、飛び石の直撃を受ける
- フロントスカート — 車体前面の下端。正面から石を受ける
- フェンダー下部・フェンダーアーチ — タイヤが巻き上げた砂利が直撃
- タイヤハウス — 飛び石・泥・融雪剤のすべてが集中する過酷な環境
板金補修の場合は、パテ成形・サフェーサーの後、上塗り塗装の前にチッピングコートを施工します。
施工方法 — UBSピストル高粘度IIでの塗布手順
チッピングコートの施工にはUBSピストル高粘度II(エアガン)を使用します。
準備
- 施工面の油分・ホコリをシリコンオフ等で除去し、十分に乾燥させる
- 施工しない部分をマスキングテープと養生紙で保護する
- UBSピストル高粘度IIにカートリッジをセットし、エアホースを接続する
塗布
- エア圃5キロ(0.5MPa)以下に設定する
- 施工面から20~30cm離してトリガーを引く
- 一方向に塗ったら、次は直角方向(クロス)に重ね塗りする
- 1度の塗布で膜厚1mmを超えないこと
- 凹凸テクスチャの粗さはノズルの調整とエア圧で加減する
乾燥と上塗り
SB S3000の場合、指触乾燥後であればそのまま上塗り塗装が可能です。完全硬化後に上塗りする場合は、プライマーを塗布してから上塗りしてください。
ホンダNシリーズにはSBS3000が推奨品
メーカーのQ&A情報によると、ホンダNシリーズ(N-BOX、N-WGN、N-ONEなど)のチッピングコートにはSBS3000が推奨されています。
Nシリーズは軽自動車の中でも販売台数が多く、板金補修の需要も高い車種です。純正チッピングコートの質感に近い仕上がりを求める場合は、SBS3000を選択してください。